白砂青松　深日の浦　松林の向こう

小山の中腹より立ち上る黒鉛１０本

約１５０年前の当時の光景である。

深日焼は天保６年（１８３５年）、浜野半兵衛開窯と伝えられている。

しかしここは古代の集落遺跡や地元産業のタコ壺漁から見て、古くからわずかながらも窯業の耐えざる地であったと思われ、さらに深日湊という良港をひかえて、中世以降地味ながらも近隣諸国へ雑器の類を移出していたものと推測される。

前述、浜野半兵衛は、この地に京焼の焼成技術及び施釉技術を持ち込み、本格的な窯を築いたことにより深日焼の開祖とされているのである。

当時、深日焼にあたっては「深日焼」等の印銘は使用しておらず、すべて無銘であるため、当時の品はあっても市井に埋もれ、現在では判別不可能とされている。

明治期、陶工河野徳三郎の工夫により雅陶、茶陶が生産されるに至り遠く東京、九州、さらに京都にまでその販路が拡がり、京都清水にあっては清水焼として販売され観光客に珍重された。

その後、窯業は隆盛を極め、この小さな地域に、大型連房式登り窯等計１０基が出現し、一大窯業地の観を呈したが、敗戦を境として、国民の需要、消費生活の変化に伴い衰退し、廃窯となったのである。

その後、田島乾正（故人）が、この地で生まれ育ち、幼いころ見た窯から吹き出す真っ白に光る炎が忘れられず、少年時代よりロクロ技術を独修し、また地域古老を尋ね聞き取り調査を行い、当地の採土場、釉薬についても知識を得、これを基に幾度の焼成技術実験を繰り返し、ついにかつての深日焼を再現するに至りました。

田島乾正（故人）亡き後は深日焼承継する者がおらず、幻の深日焼となっています。

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